BtoB向けディスプレイ広告の全貌と2026年戦略:成果を最大化する「Squad beyond」流の運用・制作統合論
目次
序章:デジタルマーケティングの転換期とBtoB広告の今
BtoBマーケティングの世界では、かつて当たり前だった「展示会での名刺交換」や「テレアポ」といった手法が、テクノロジーの進化で大きく様変わりしました。特にGoogleなどの検索広告は、すでに課題を感じている「今すぐ客」を見つける手段として、長く活用されてきました。
しかし、2026年を前に、私たちは新たな壁に直面しています。検索される回数には限りがあり、広告費(CPA)も上がり続けています。何より、買い手の行動が複雑になっているのです。
今のビジネスパーソンは、営業担当者に会う前に、情報の6〜7割をネット上で調べて済ませていると言われています。この「目に見えない検討期間」に、いかに自社を思い出してもらい、信頼を得るか。その鍵を握るのが、ネットを見ているユーザーに幅広くアプローチできる「ディスプレイ広告」です。
この記事では、BtoBにおけるディスプレイ広告の基本から、最新の攻略法、そして広告とページ(LP)を一つの流れとして整える「次世代の運用モデル」について、分かりやすく解説します。
第1章 BtoBディスプレイ広告の構造的特性とメカニズム
1.1 ディスプレイ広告の本質的定義と役割の再考
ディスプレイ広告とは、Webサイト、ニュースアプリ、SNSなどの広告枠に、画像、動画、テキストを用いて表示される広告形式の総称である。一般に「バナー広告」と呼称されることもあるが、その表現力と配信技術は近年、高度化している。
BtoBマーケティングにおいて、ディスプレイ広告は単なる「認知獲得」の手段ではない。それは、潜在的な課題を抱える企業担当者に対し、解決策の存在を知らせ、関心を引き、検討のテーブルに乗せるための、極めて戦略的な「需要創出」のツールである。
リスティング広告との決定的差異:能動と受動
リスティング広告が、ユーザーが特定のキーワードを検索した瞬間に表示される能動的なアプローチであるのに対し、ディスプレイ広告は、ユーザーがニュースを読んだり、SNSを閲覧したりしている際に表示される受動的なアプローチである。
| 比較軸 | リスティング広告(検索連動型) | ディスプレイ広告(運用型) |
| ユーザーの状態 | 課題が顕在化し、解決策を探している | 課題に気づいていない、または情報収集中 |
| アプローチ層 | 顕在層(今すぐ客) | 潜在層〜準顕在層(そのうち客) |
| クリック単価(CPC) | 高騰傾向(競合過多) | 比較的安価 |
| 配信ボリューム | 検索数に依存(天井がある) | 圧倒的に多い(Web全体の90%以上) |
| 主な目的 | 刈り取り(コンバージョン獲得) | 認知拡大、リードナーチャリング、リターゲティング |
| クリエイティブ | テキスト主体 | 画像、動画、テキストの組み合わせ |
この2つは、どちらが良いというわけではなく「補い合う関係」にあります。ディスプレイ広告で認知を広げることで、結果として検索する人が増え、検索広告の成果も上がるという良い循環が生まれます。
1.2 BtoBとBtoCでは、戦い方が全く違う
同じディスプレイ広告であっても、BtoBとBtoCではその戦い方は大きく異なる。この違いを理解せずに、BtoCの成功体験(例:感情に訴えるエモーショナルな画像、大幅な割引訴求など)をそのままBtoBに持ち込むことは、失敗への最短ルートである。
関わる人数が多い(組織での決定)
BtoCが個人の感情や衝動で購買が決まることが多いのに対し、BtoBの購買決定には複数の関係者が関与する。担当者、その上司、技術部門、購買部、そして最終決裁者である経営層。ディスプレイ広告は、これら異なる立場のステークホルダーに対し、それぞれに響くメッセージを届ける必要がある。例えば、現場担当者には「業務効率化・工数削減」を、経営層には「ROI・売上向上」を訴求するといった使い分けである。
検討期間の長期性
BtoBの検討期間は数ヶ月から、ITシステムや設備投資などの大型商材であれば年単位に及ぶこともある。したがって、ディスプレイ広告の目的は「即決」させることではなく、「忘れられないこと(マインドシェアの維持)」と「信頼の積み上げ(ナーチャリング)」にシフトする。一度サイトを訪れたユーザーに対して、適切な頻度とタイミングで広告を表示し続ける「リターゲティング」は、この長い検討期間を並走するために重要な戦術となる。
訴求の論理性
BtoCでは「好き・嫌い」や「憧れ」が動機となるが、BtoBでは「合理的理由」が求められる。なぜそのサービスが必要なのか、導入することでどのような定量的メリットがあるのか、競合他社に対する優位性は何か。クリエイティブには、信頼性、専門性、そして具体的便益を論理的に表現するデザインと言語化能力が要求される。
第2章 主要プラットフォームの特性分析と2025年攻略ガイド
BtoBディスプレイ広告において、適切な「場所(プラットフォーム)」を選ぶことは、適切な「人(ターゲット)」に出会うための第一歩である。ここでは、主要なアドネットワークと、近年重要度を増している新興プラットフォームについて、その特性と攻略法を詳述する。
2.1 Google広告:全方位型アプローチの基盤
Google広告は、その圧倒的な在庫量と精緻なAI技術により、BtoBマーケティングにおいても中心的な役割を果たす。
Googleディスプレイネットワーク(GDN)
GDNは、200万以上のWebサイトやアプリ、YouTube、Gmailなどに広告を配信できる世界最大のネットワークである。
- カスタムオーディエンスの活用: BtoBにおいて特に強力なのが「カスタムオーディエンス(旧カスタムインテント)」である。これは、特定のキーワードをGoogleで検索したユーザーや、特定のURL(競合他社のサイトや業界メディアなど)を閲覧したユーザーをリスト化し、広告を配信する機能である。例えば、「勤怠管理システム」を販売する場合、競合製品名を検索しているユーザーや、人事労務系のニュースサイトを閲覧しているユーザーを狙い撃ちすることが可能となる。
- トピックターゲット: 特定のテーマ(例:「ビジネス・産業」「コンピュータ・電化製品」)に関連するWebページに広告を配信する手法も、業界指定の精度が高いBtoBでは有効である。
デマンドジェネレーションキャンペーン
2024年にファインド広告(Discovery Ads)からアップグレードされた「デマンドジェネレーション」は、2025年のBtoBトレンドにおいて最重要項目のひとつである。
- 配信面: YouTube、Discover(Googleアプリの発見タブ)、Gmailという、Googleが保有する最もエンゲージメントの高いプロパティに限定して配信される。これらはユーザーが新しい情報を求めてリラックスしている(Lean-back)状態であることが多く、ブランドストーリーを深く伝えるのに適している。
- AIによる類似拡張: BtoBではターゲット母数が少ないことが課題となるが、Demand Genは、保有している良質な顧客リストをアップロードすることで、その顧客と似た特徴を持つユーザーをGoogleのAIが見つけ出す「類似セグメント」の精度が極めて高い。初期段階では「リード獲得」ではなく「マイクロコンバージョン(資料閲覧など)」をシグナルとしてAIに学習させ、徐々に「商談化」に近いコンバージョンへ最適化ポイントを移していく戦略が推奨される。
2.2 Yahoo!広告(YDA):国内BtoBにおける「信頼」の土壌
Yahoo! JAPANは、依然として日本のビジネスパーソンにとって主要な情報源であり、そのトップページやYahoo!ニュースへの広告出稿は、圧倒的なリーチと「メジャー感(信頼性)」を企業にもたらす。
サーチターゲティングの威力
YDA(Yahoo!ディスプレイ広告)独自の機能であり、BtoBにおいて最強の武器となるのが「サーチターゲティング」である。これは、ユーザーがYahoo!検索で過去に入力したキーワード履歴に基づいて広告を配信する機能である。
リスティング広告は検索した「その瞬間」にしか広告を出せないが、サーチターゲティングは「過去に検索した事実」を持つユーザーに対し、その後ニュースを見ているタイミングなどで安価に広告を表示できる。検討期間が長いBtoB商材において、一度検索行動を起こしたユーザーを逃さず追跡できる点は極めて合理的である。
ビジネス属性ターゲティングの進化
LINEヤフー株式会社のデータ統合により、YDAではユーザーの興味関心だけでなく、推定される属性(経営者、決裁者など)や、企業ターゲティングの精度も向上している。
2.3 LinkedIn広告:BtoBターゲティングの最高峰
「名刺情報のデータベース」とも言えるLinkedInは、グローバル展開企業や外資系企業だけでなく、国内BtoBマーケティングにおいても重要なチャネルとなりつつある。
圧倒的なターゲティング精度
他のSNSが「趣味・嗜好」に基づくターゲティングであるのに対し、LinkedInは「職務経歴書」に基づくターゲティングである。会社名、業種、従業員規模、部署、役職、スキル、出身大学など、ビジネスプロフィールそのものをターゲット条件に設定できる。
「従業員数1,000名以上の製造業のマーケティング部長」といったピンポイントな指定が可能であり、無駄撃ち(ターゲット外への配信)を極限まで減らすことができる。
コストと質のトレードオフ戦略
LinkedIn広告のCPC(クリック単価)やCPM(インプレッション単価)は、FacebookやGoogleと比較して高額になる傾向がある(クリック単価が1,000円を超えることも珍しくない)。しかし、決裁権者へ直接リーチできる確率が高いため、リード一件あたりの獲得単価(CPA)が高くても、その後の商談化率や受注率を加味したROI(投資対効果)では優れているケースが多い。
戦略としては、LinkedInで質の高いリード(決裁者クラス)を一本釣りし、GDNやYDAで広く浅く潜在層を網羅するという「ハイブリッド運用」が定石となる。
2025年LinkedInトレンド
2025年に向けて、LinkedInは単なる求人・ネットワーキングサイトから、「BtoBコンテンツプラットフォーム」へと進化している。
- 動画コンテンツの急増: LinkedInにおける動画の消費量は前年比34%増で成長しており、特にショート動画による知見の共有が活発化している。
- Thought Leadership(ソートリーダーシップ): 企業の公式投稿だけでなく、社員個人のアカウントからの発信が推奨される。専門的な知見やインサイトを発信することで、個人と企業のブランド信頼度を同時に高める手法である。
- ドキュメント広告: スライド形式の資料(PDFなど)をフィード上で直接閲覧・ダウンロードできる広告フォーマット。ホワイトペーパーや調査レポートとの相性が抜群に良い。
2.4 Facebook / Meta広告:AIによる自動化の波
Facebook(Meta)広告は、ビジネス利用の多い実名制SNSとしてBtoBでも依然として強力である。特に近年は「Advantage+」と呼ばれるAIによる自動最適化機能が進化しており、細かなターゲティング設定を行わずとも、AIが適切なユーザー(コンバージョンする可能性が高い人)を見つけ出す能力が高まっている。
Metaのリード獲得広告(インスタントフォーム)は、LPに遷移させずにFacebook上でフォーム入力が完了するため、ユーザーの摩擦が少なく、大量のリードを獲得するのに適している。CRMと連携させることで、獲得したリードに対して即座にインサイドセールスが架電する体制を構築すれば、商談化率の低下というデメリットも補完できる。
第3章 戦略的クリエイティブとLPO:2025年の勝利の方程式
プラットフォームがいかに進化しようとも、最終的にユーザーの心を動かし、クリックさせるのは「クリエイティブ」であり、その後の受け皿となる「ランディングページ(LP)」である。
3.1 BtoBクリエイティブの最新トレンドと心理学
2025年のBtoBクリエイティブにおいては、「信頼」と「人間味」への回帰、そして「具体性」の追求がトレンドとなる。
脱・素材写真とリアリティの追求
握手をするビジネスマン、真っ白な会議室で談笑する外国人モデルといった、いわゆる「ストックフォト」は、もはやユーザーの無視を招くだけでなく、「実態のない怪しいサービス」というネガティブな印象すら与えかねない。
トレンドは、実際の社員の顔、実際のオフィスの風景、実際のプロダクト画面(UI)、そして導入企業のリアルなロゴを使用することである。これらは「社会的証明」として機能し、無意識のうちに信頼感を醸成する。
ベネフィットの数値化と具体化
「業務効率化」「コスト削減」といった手垢のついた抽象的なコピーは響かない。「経理業務の工数を1/6に削減」「リード獲得単価を40%改善」といった具体的な数値、あるいは「インボイス制度対応の遅れを一発解消」といった具体的な課題解決をバナー内で明示する必要がある。
動画広告のストーリーテリング
BtoBにおいても動画広告の効果は実証されており、特にデマンドジェネレーションやSNS広告では必須となりつつある。ただし、テレビCMのようなイメージ映像ではなく、「課題提起(こんな悩みありませんか?)→ 解決策の提示(このツールなら解決できます)→ 実証(導入企業の声)」という論理構成を持った、短尺(15〜30秒)の説明型動画が最もコンバージョンに寄与する。
3.2 LPO(ランディングページ最適化)の「2025年基準」
広告をクリックしたユーザーが最初に見るページ(LP)は、その後の成果を左右する非常に重要な場所です。
どれほど良い広告を作っても、その先のページが分かりにくければ、ユーザーはすぐに離れてしまいます。これでは、せっかく広告費をかけて集めた興味を無駄にしてしまうことになります。
LPOチェックリスト2025
以下の要素は、もはや「推奨」ではなく「必須」の要件である。
- ファーストビューの3秒ルール: ユーザーは着地から3秒以内に「このページは自分に関係があるか」を判断する。広告のコピーとLPのヘッドラインが一致しているか?具体的なベネフィットが瞬時に伝わるか?
- モバイルファースト: BtoBであっても、情報収集の初期段階はスマートフォンで行われることが多い。スマホでの可読性、操作性、表示速度はPC以上に重要である。
- CTAの視認性: 「資料請求」や「お問い合わせ」のボタンは、スクロールせずとも常にアクセスできる場所(追従バナーなど)にあるか。マイクロコピー(ボタン周りの文言)は「無料」「1分で完了」などハードルを下げる表現になっているか。
- 信頼性コンテンツの配置: 導入実績ロゴ、ケーススタディ、第三者機関の認証マークなどは、ファーストビュー直下などの目立つ位置に配置し、離脱を防ぐアンカーとして機能させる。
3.3 「Message Match(メッセージの一致)」という最大の課題
ここで、多くのマーケターが直面する構造的な課題について言及しなければならない。それは「広告クリエイティブの多様性」に対して「LPの柔軟性」が追いついていないという問題である。
例えば、あるSaaS製品の広告で、
- 訴求A:「コスト削減」
- 訴求B:「機能の多さ」
- 訴求C:「サポートの手厚さ」
という3種類のバナーを配信したとする。
しかし、着地するLPが1種類(汎用的なトップページやLP)しかない場合、訴求Aで入ってきたユーザーはLPのトップで「多機能」をアピールされても響かず、「話が違う」と感じて離脱してしまう。これがMessage Match(メッセージマッチ)の欠如である。
理想的には、広告の訴求ごとに専用のLP(または専用のファーストビュー)を用意すべきだが、従来の制作フローでは、エンジニアやデザイナーのリソース不足により、広告の数だけLPを作ることは不可能に近かった。
この「運用」と「制作」の分断こそが、CPA高騰の真因であり、多くのBtoBマーケティング組織が抱えるボトルネックである。そして、この課題をテクノロジーで解決するために開発されたのが、次章で詳述する「Squad beyond」である。
第4章 Squad beyondによる「運用と制作の融合」:成果を10倍にするメカニズム
ここでSquad beyondがいかにして前述の「分断」を解消し、BtoBディスプレイ広告の成果を劇的に向上させるかを解説する。Squad beyondは単なるLP作成ツールではなく、広告運用、制作、分析、最適化を一元管理する「デジタルマーケティングプラットフォーム」である。
4.1 「Branch(ブランチ)」機能で、ページの中身を自動で出し分ける
一番の強みは、広告の内容に合わせて、移動先のページ(LP)の中身を自動で変えられることです。
機能の仕組み
これは、1つの記事LP(ベースとなるURL)に対して、流入元の広告パラメータに応じてコンテンツの一部(主にファーストビューやCTAエリア)を自動的に出し分ける機能である。
具体的には、広告媒体側で設定したパラメータ(例:?utm_creative=cost_cut)をSquad beyondが読み取り、そのパラメータに対応した「ブランチ(枝分かれしたバージョン)」を表示する。
具体的活用シナリオ
- **バナーA(コスト削減訴求)**をクリックしたユーザー → LPブランチA(ヘッドライン:「コストを50%削減した実績多数」)を表示。
- **バナーB(機能性訴求)**をクリックしたユーザー → LPブランチB(ヘッドライン:「業界最多の100機能搭載」)を表示。
- **バナーC(導入事例訴求)**をクリックしたユーザー → LPブランチC(ヘッドライン:「同業他社の成功事例を公開」)を表示。
この出し分けが、同一URL内で、かつノーコードで即座に設定可能である。これにより、広告クリエイティブとLPの親和性を100%に保つことができ、直帰率の低下とCVR(コンバージョン率)の飛躍的な向上を実現する。実際に、株式会社ピアラではこの機能を活用し、ABテストの準備・実施時間を従来の1/6に短縮することに成功している。
4.2 「Widget(ウィジェット)」とノーコード制作による高速PDCA
BtoBでは、スピードが重要です。「ページを少し直すのに1週間かかる」という状態では、今の速い流れにはついていけません。Squad beyondの「LP制作エディター」は、PowerPointやブログサービスのような感覚で、誰でも直感的にLPを制作・編集できる。
成果直結型パーツ「Widget」
Squad beyondには、過去の膨大な運用データから導き出された「成果の出るデザインパーツ」がWidget(ウィジェット)として400種類以上搭載されている。
- 比較表Widget: 競合他社との機能を比較する表を、枠に入力するだけで美しく作成。
- 口コミ/導入事例Widget: 顧客の顔写真とコメントを見やすく配置するレイアウト。
- CTAボタンWidget: クリックしたくなる動き(アニメーション)や配色が施されたボタン。
- カウントダウンタイマー: セミナー申し込み期限などをカウントダウンし、緊急性を演出。
これらをドラッグ&ドロップで配置するだけで、デザイナー不在でもプロ品質のLPが完成する。これにより、マーケターは「制作待ち」の時間から解放され、「仮説検証(PDCA)」の本質的な業務に集中できる。
4.3 ヒートマップ分析と統合レポートの可視化
作ったLPが読まれているのか、どこで離脱されているのかを知るために、別途ヒートマップツール(PtengineやUserHeatなど)を導入し、タグを埋め込む必要はない。Squad beyondは、全ページにヒートマップ機能が標準搭載されており、公開と同時にデータの蓄積が始まる。
統合レポートの威力
一般的な運用では、広告のデータ(Google Analyticsや媒体管理画面)と、LPのデータ(ヒートマップツール)が別々に存在し、それらをExcelで突き合わせる作業が発生する。Squad beyondのレポート画面では、これらが統合されている。
- どの広告クリエイティブから流入したユーザーが、
- LPのどの位置までスクロールし(熟読率)、
- どのボタンをクリックしたか(クリック率)、
- 最終的にCVしたか。
これらが一気通貫で可視化される。例えば、「バナーAからの流入ユーザーは、LPの『料金表』エリアで離脱が多い」という事実が分かれば、バナーAの訴求を変えるか、LPの料金表の見せ方を変えるか、という具体的な改善策を即座に打つことができる。
4.4 企業向け機能:Review(レビュー)と審査承認フロー
BtoB企業、特に大手企業においては、広告表現のコンプライアンスチェック(法務確認、薬機法確認、ブランドガイドライン確認)が厳格である。Squad beyondには、この確認フローをシステム化する「Review」機能がある。
- コメント機能: 制作したLPのプレビュー画面上で、修正指示を直接書き込むことができる(Googleドキュメントのような使用感)。
- 承認フロー: 上長や法務担当者が「承認」ボタンを押さない限り、LPが外部に公開(配信)されない設定が可能。
- 履歴管理: 誰がいつ承認したか、どのような修正が行われたかのログが全て残るため、監査対応やトラブル時の証跡としても機能する。
この機能により、関係者の多いBtoBプロジェクトにおいても、ガバナンスを効かせながらスピードを維持した運用が可能となる。
第5章 データ分析とアトリビューション:真の貢献度を測る
ディスプレイ広告の効果測定において、多くのBtoB企業が陥る罠が「ラストクリック至上主義」である。
5.1 アトリビューション分析の必要性
BtoBの検討プロセスは長く複雑である。顧客は最初にディスプレイ広告でサービスを知り、その後リターゲティング広告で興味を持ち(再訪)、最後に社名検索(リスティング広告)をしてCVに至るかもしれない。
この場合、ラストクリックであるリスティング広告だけを評価してしまうと、「ディスプレイ広告はCV獲得に貢献していない」と判断され、予算がカットされてしまう。その結果、認知の入り口が閉ざされ、やがてリスティング広告の指名検索数も減少するという負のスパイラルに陥る。
分析モデルの選択
- 起点モデル: 最初に接点を持った広告を高く評価する。認知施策の評価に適している。
- 減衰モデル: CVに近い接点ほど高く評価するが、初期の接点も一定評価する。
- 接点ベース: 最初と最後を高く評価し、中間を低く評価する。
Squad beyondやGoogle Analytics 4 (GA4)を活用し、これらのモデルを用いてディスプレイ広告の「アシスト効果(間接CV)」を可視化することが重要である。
5.2 CRM連携とリードの質の評価
BtoBマーケティングのゴールは「リード獲得」ではなく「売上(受注)」である。したがって、広告運用のKPIも「CPA(獲得単価)」から「ROAS(費用対効果)」や「商談化数」へシフトすべきである。
これを実現するためには、広告プラットフォームとCRM/SFA(Salesforce, HubSpotなど)を連携させる必要がある。
- オフラインコンバージョンのインポート: CRM上で「商談化」や「成約」に至ったリードのデータをGoogle広告などに押し戻す(インポートする)。
- 価値に基づく入札: 商談化したリードには高い価値を、ただの資料請求には低い価値を割り当て、AIに「価値の高いユーザー」を学習させる。
これにより、ディスプレイ広告は単に数を集めるだけでなく、「成果(売上)を運んでくる心強いパートナー」になってくれます。
第6章 2026年への展望とマーケターへの提言
6.1 テクノロジーと人間性の融合
2025年に向けて、AIが自動で動画を作ったり、広告の設定を最適化したりする技術は、さらに進化していくでしょう。しかし、そんな時代だからこそ、これまで以上に「人を理解すること」が大切になります。AIは過去のデータから答えを出すのは得意ですが、「これから先の世の中の空気感」や「人の細かな感情」までは読み取れないからです。
ビジネスの買い手も、会社である前に一人の「人間」です。日々の仕事で抱えているプレッシャーや不安、そして「成功させたい」という願い。そうした気持ちに寄り添い、心に届くストーリーを伝えることこそが、これからのマーケターにとって最も価値のある役割になります。
6.2 組織の壁を越える
広告を出すチーム、ページを作るチーム、そして実際にお客さまと対話する営業チーム。これらの間にある「壁」をなくしていくことが欠かせません。
情報をオープンにし、全員が「売上の向上」という一つの目標に向かって手を取り合う考え方が、これからはより重要になります。Squad beyondのようなプラットフォームは、数字やデザインという共通の言葉を提供することで、チーム同士がスムーズに協力し合えるきっかけを作ってくれます。
6.3 結び:Squad beyondと共に挑む未来
デジタル広告の世界は残酷なまでに変化が速い。昨日の正解が今日の不正解になることも珍しくない。しかし、その変化を恐れず、新しいテクノロジー(Squad beyondのBranch OperationやAI機能など)を武器にし、高速で仮説検証を繰り返すチームだけが、市場の勝者となり得る。
我々Squad beyondは、単なるツールベンダーではなく、挑戦するマーケターの「伴走者(Squad)」として、共に2025年の荒波を乗り越え、その先にある景色(Beyond)を見るために存在している。
さあ、広告とLPの分断を終わらせ、本質的なマーケティングを始めよう。