取適法と広告制作|公取委の指導71件とLP発注
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LPやバナーの修正を、制作会社に何度もお願いしている。広告主の意向で発注の内容が変わり、追加の作業をそのまま頼んでしまっている。代理店として制作会社に発注している立場で、取適法の話を聞いて気になっている。そんな方は少なくないはずです。
公正取引委員会と中小企業庁は2026年6月29日、広告業における取適法違反の集中調査の結果を公表し、広告業者に71件の指導を行ったことを明らかにしました。指導の中には、発注時に修正の条件を決めないまま、制作会社に無償で何度も修正・校正をさせていた事例が含まれています。
この記事では、公正取引委員会の発表と取適法のリーフレット、よくある質問をもとに、指導された行為、取適法の対象になる取引と事業者、広告主に求められたこと、LP制作を発注するときに見直す点を整理します。外注先の選び方や費用の相場は「LPコーディングの外注相場はいくら?費用比較と未経験でも制作できる方法」で扱っています。
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目次
1. 広告業への取適法の集中調査とは
1-1. 広告業者に71件の指導が行われた
公正取引委員会と中小企業庁は、2026年2月以降、発注側の広告業者と受注側の広告制作業者との取引について集中的に調査し、広告業者に71件の指導を行いました。調査の対象には、新聞・雑誌・テレビ・インターネット・交通・屋外の広告の制作と、広告に付随するイベントの企画運営に関する取引が含まれます(出典:広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果について|公正取引委員会)。
発表では、広告制作業者がほかの広告制作業者に発注する取引も調査の対象にしたとされています。一方で、取引の流れは広告業者と広告制作業者の間のものとして整理されており、広告主は直接の契約当事者ではないことが前提になっています(出典:同上)。
1-2. 取適法は、2026年1月に下請法から変わった法律
取適法は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の改正法が2026年1月1日に施行されて、名前が変わった法律です。正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、発注する側を「委託事業者」、受注する側を「中小受託事業者」と呼びます。改正では、資本金の基準に加えて従業員数の基準が追加されたほか、手形払の禁止や、協議に応じない一方的な代金の決定の禁止などが加わりました(出典:取適法リーフレット|公正取引委員会)。
2. 取適法の対象になる取引と事業者
2-1. 広告やLPの制作は「情報成果物作成委託」にあたりうる
広告のデザインやLPの制作は、取適法の「情報成果物作成委託」にあたりうる取引です。取適法の対象になるかは、取引の内容と、発注する側と受注する側の資本金または従業員数で決まり、いずれかの基準に当てはまれば対象になります(出典:取適法リーフレット|公正取引委員会)。
| 発注する側(委託事業者) | 受注する側(中小受託事業者) |
|---|---|
| 資本金5千万円超 | 資本金5千万円以下 |
| 資本金1千万円超5千万円以下 | 資本金1千万円以下 |
| 従業員100人超 | 従業員100人以下 |
上の表は、プログラムの作成を除く情報成果物作成委託の基準です。プログラムの作成を委託する場合は、資本金3億円・1千万円、従業員300人の基準になります(出典:同上)。

2-2. 代理店がクライアントのLPを制作会社に出す場合
広告業者が、広告主から請け負った広告やLPの制作を制作会社に委託する取引は、今回の集中調査がまさに対象にした取引です。資本金または従業員数の基準に当てはまれば、代理店は委託事業者として取適法の義務を負います(出典:広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果について|公正取引委員会)。
2-3. 広告主が自社のLPを制作会社に出す場合
公正取引委員会のよくある質問では、自社のホームページは自社の宣伝のために使うものなので、自社で使う情報成果物にあたり、外注する部分を自社で作る能力がない場合は、情報成果物作成委託に該当しないとされています。一方で、自社で使う情報成果物を日頃から自社で作っていて、その部分を外注する場合は、情報成果物作成委託にあたると書かれています(出典:よくある質問コーナー(取適法)|公正取引委員会)。
自社でLPを日頃から作っている広告主が、その一部を制作会社に外注する場合は、取適法の対象になる可能性があります。自社の取引が対象になるか判断に迷う場合は、公正取引委員会の相談窓口に確認します。
3. 指導された主な行為
3-1. 発注のしかたに関する行為
発表では、広告業者の次のような行為が指導の対象になりました(出典:広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果について|公正取引委員会)。
| 行為 | 指導された内容 |
|---|---|
| 発注内容を明示しない | 口頭発注が商慣習であることを理由に、発注時に発注内容を明示していなかった。受領時にあとから明示したり、発注日を遡って書いたりしていた |
| 修正の条件を明示しない | 修正・校正を何度も求める前提で発注しているのに、給付内容を変更する条件を明示していなかった |
| 知的財産権を明示しない | 制作物の知的財産権を譲渡・許諾させることを含めて発注しているのに、発注時に明示していなかった |
3-2. 修正・費用・権利に関する行為
| 行為 | 指導された内容 |
|---|---|
| 無償の修正・校正 | 発注後に内容が変わる前提を伝えずに発注し、受領までに、制作業者に責任のない修正・校正を無償で何度もさせていた |
| 発注取消しの費用 | 広告主や広告業者の都合で発注を取り消したのに、それまでに制作業者が使った費用を払っていなかった |
| 知的財産権の無償譲渡 | 制作の過程で制作業者に生じた知的財産権を、無償で譲渡・許諾させていた。基本契約書に無償で譲渡すると書いていた例もあった |
| コンペの試作品 | コンペに応募するときに、取引先の制作業者に試作品を無償で作らせたり、失注を理由に費用を払わなかったりしていた |
| 成果物の保管 | 取引が終わったあとも、制作物を制作業者に無償で保管させていた |
3-3. 支払いに関する行為
受領した日から60日を超える可能性がある支払いの制度を採っていた例、請求書の提出が遅れたことを理由に期日までに払わなかった例がありました。取適法で新たに禁止された行為として、2026年1月以降も手形で支払っていた例、手形を電子記録債権に替えても期日までに満額の現金にしにくい形のままだった例、振込手数料を制作業者に負担させていた例も挙げられています(出典:同上)。
4. 公正取引委員会が広告業界に求めていること
4-1. 発注時に、修正の条件と知的財産権の扱いを明示する
発表のまとめでは、発注時に発注内容を明示することは委託事業者の義務であり、口頭発注という業界の商慣習を早急に見直すよう求めています。制作物の知的財産権を譲渡・許諾させ、それを給付の一部とする場合は、その旨を発注時に明示することが重要だとしています(出典:広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果について|公正取引委員会)。
4-2. 修正・校正の費用は、回数を決めて代金に含めるか、別途払う
制作物の修正・校正を求める場合は、制作業者が要した費用を払う必要があるとして、次の2つの方法が示されています(出典:同上)。
- 修正・校正の費用を代金に含めるなら、あらかじめ制作業者と協議して、給付内容を変更する条件を定める
- 発注時に条件を定めるのが難しいなら、修正・校正で生じた追加費用を、制作業者と十分に協議したうえで別途払う
1つめの条件の例として、発表には次のように書かれています。
「受領前の修正・校正回数は○回までを給付内容に含めるものとし、○回を超える場合は別途費用について協議する」
4-3. 広告主にも、予定にない変更で追加費用が生じることの認識を求めている
調査は主に広告業者の行為を対象にしたものですが、発表は、広告主にも、取引の過程で広告業者の取適法違反につながるおそれのある行為をしないよう十分注意することを求めています。広告主の意向で発注後に内容が変わり、制作業者に追加の作業が生じた事例が複数あったとして、広告主も、予定にない変更や発注の取消しは追加費用が生じうることを認識し、広告業者に追加費用を払うなどの対応をとることが望ましいとしています(出典:同上)。
5. LP制作を発注するときに見直すこと
ここまでの内容を、LPや広告クリエイティブの制作を発注する場面に置き換えると次のとおりです。
| 場面 | 見直すこと |
|---|---|
| 発注するとき | 発注内容・代金・支払期日・支払方法を、書面か電子メールなどで発注時にすぐ伝える。電話やチャットの口頭だけで済ませない |
| 修正が見込まれるとき | 修正・校正の回数と、超えたときの費用の扱いを発注時に決めておく |
| 知的財産権 | 制作物の権利を譲り受ける・使わせてもらう場合は、発注時に明示し、その対価を代金に含める |
| 内容が変わったとき | 広告主の意向による変更や取消しで生じた作業の費用を、制作会社と協議して払う |
| 支払い | 受領から60日以内に支払期日を定め、手形を使わない。振込手数料を制作会社に負担させない |
取適法の委託事業者には、ほかにも取引の記録を作成して2年間保存する義務や、支払いが遅れたときの遅延利息(年率14.6%)を払う義務があります(出典:取適法リーフレット|公正取引委員会)。

6. LP制作の発注でよくある失敗例
ここで挙げるのは、取適法の対象になる取引を前提にした例です。
6-1. 失敗例1:チャットで発注して、条件をあとから送る
- 症状:制作会社とのやり取りをチャットや電話だけで進め、制作物が納品されてから発注書を送っていると、発注時に発注内容を明示していなかったことになり、発注日を遡って書いても取適法の違反になる。
- 原因:取適法では、委託事業者は発注したら直ちに発注内容を明示する義務があります。公正取引委員会は、発注時に明示せず受領時などにあとから明示していた広告業者や、発注日を遡って書いていた広告業者を指導しています(出典:公正取引委員会)。
- 対策:発注を決めた時点で、発注内容・代金・支払期日などを電子メールなどで送る運用に切り替えます。チャットで相談を進める場合も、発注の確定はメールや発注書で残します。
- 回避策:発注書のひな形に、修正・校正の回数、知的財産権の扱い、支払期日の欄をあらかじめ入れておきます。毎回同じ形で発注できるようにしておくと、明示の漏れが起きにくくなります。
6-2. 失敗例2:修正の回数を決めずに発注し、何度も無償で直してもらう
- 症状:広告主の確認が入るたびにLPの文言や画像の差し替えを制作会社に頼み、修正の回数や費用を決めないまま進めていると、制作会社に責任のない修正・校正を無償で何度もさせることになり、不当な給付内容の変更として問題になる。
- 原因:広告の制作では、修正・校正を繰り返して制作物を具体化していくことが多く、発注時に内容を決めきれません。公正取引委員会は、変更の前提を伝えず条件も明示しないまま、無償で複数回の修正・校正をさせていた広告業者に、費用を払うよう指導しています(出典:同上)。
- 対策:発注時に「受領前の修正・校正は何回まで代金に含めるか、超えたら費用を協議する」と決めておきます。決めるのが難しい場合は、追加の修正で生じた費用を、制作会社と協議して別途払います。
- 回避策:広告主の確認の回数を減らせるよう、修正の依頼は1回にまとめて出します。文言の差し替えのように社内でできる修正は、社内で対応できる体制にしておくと、制作会社への依頼そのものが減ります。
6-3. 失敗例3:コンペのために、取引先に試作品を無償で作ってもらう
- 症状:広告主のコンペに応募するために、いつも取引している制作会社にLPやバナーの試作品を作ってもらい、失注したからと費用を払わないでいると、不当な経済上の利益の提供要請として問題になる。
- 原因:公正取引委員会は、コンペに応募するときに取引先の制作業者に無償で試作品を作らせた広告業者や、失注を理由に費用を払わなかった広告業者に、試作品の制作に要した費用を払うよう指導しています(出典:同上)。
- 対策:コンペのための試作品を頼むときも、通常の発注と同じように内容と代金を発注時に明示し、受注できたかどうかにかかわらず費用を払います。
- 回避策:コンペに応募するかどうかを決める段階で、試作品の制作費を見積もりに入れておきます。制作物の知的財産権を誰が持つかも、試作品の段階で取り決めておきます。
7. Squad beyondで、LPの修正を社内で回し、依頼の記録を残す
7-1. 文言や画像の差し替えは、Versionを複製して社内で行う
公正取引委員会が指摘した無償の修正・校正の多くは、発注後に内容が変わることから生まれています。Squad beyondでは、Versionを複製して、ファーストビューやCTAボタンを変えた版を作れます(出典:Versionを複製する|Squad beyond FAQ)。制作会社に作ってもらったLPを土台に、文言や画像の差し替えのような小さな修正を社内で行えるようにしておくと、制作会社への追加の依頼を、本当に専門の作業が必要なものに絞れます。制作会社に任せる範囲と社内で持つ範囲の分け方は「記事LP制作会社 失敗しない比較軸|丸投げで終わらせない。勝てる体制の作り方」が参考になります。
7-2. 修正の依頼と承認を、審査機能で残す
Squad beyondの審査機能をONにすると、チーム内で権限を持つ人の承認を得てから、Versionの編集内容を配信ページに反映できます。修正を申請するときは審査リクエストを入力し、承認または却下されます。上司やクライアントに修正内容を確認してもらう場面で使う機能です(出典:審査機能について|Squad beyond FAQ)。広告主の確認を経た修正だけを反映する流れにしておくと、いつ、誰の依頼で、どこを直したかを社内で追いやすくなります。
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8. 取適法と広告制作についてよくある質問
Q. 取適法とは何ですか?
下請法(下請代金支払遅延等防止法)の改正法が2026年1月1日に施行されて名前が変わった法律で、正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。発注する側の委託事業者に、発注内容の明示や60日以内の支払期日の設定など4つの義務と、無償のやり直しや一方的な代金の決定など11の禁止事項を定めています。
Q. 広告業への集中調査では、何が分かったのですか?
公正取引委員会と中小企業庁は2026年2月以降、広告業者と広告制作業者の取引を集中調査し、広告業者に71件の指導を行いました。口頭発注で発注内容を明示しない、修正の条件を決めずに無償で何度も修正・校正させる、知的財産権を無償で譲渡させる、コンペの試作品を無償で作らせる、手形や振込手数料の負担といった行為が指導の対象になっています。
Q. 広告主が自社のLPを外注するのも、取適法の対象ですか?
公正取引委員会のよくある質問では、自社の宣伝のために使うホームページの外注は、外注する部分を自社で作る能力がない場合は情報成果物作成委託に該当しないとされています。ただし、日頃から自社で作っている部分を外注する場合は該当すると書かれています。資本金や従業員数の基準もあるため、判断に迷う場合は公正取引委員会の相談窓口に確認してください。
Q. 広告主は、取適法と関係ないのですか?
今回の調査は広告業者の行為が対象で、広告主は直接の契約当事者ではない前提です。ただし発表は、広告主の意向で発注後に内容が変わり、制作業者に追加の作業が生じた事例が複数あったとして、広告主にも、予定にない変更や取消しは追加費用が生じうると認識し、広告業者に追加費用を払うなどの対応をとることが望ましいとしています。
Q. LPの修正は、何回までなら無償で頼んでいいのですか?
回数の決まりはありません。公正取引委員会は、修正・校正の費用を代金に含めるなら、あらかじめ協議して「受領前の修正・校正は何回まで含め、超えたら費用を協議する」といった条件を定めることを示しています。決めるのが難しければ、追加費用を協議して別途払います。文言の差し替えのような小さな修正は、Squad beyondでVersionを複製して社内で行うと、制作会社に頼む修正を減らせます。
Q. 修正の依頼をした記録は、どう残せばいいですか?
取適法の委託事業者には、取引の記録を作成して2年間保存する義務があります。発注書や電子メールで条件を残すことが基本です。そのうえでLPの修正の流れを社内で管理したい場合は、Squad beyondの審査機能を使うと、審査リクエストを入力して申請し、権限を持つ人が承認した修正だけを配信ページに反映できるので、誰の依頼でどこを直したかを追いやすくなります。
9. まとめ
公正取引委員会と中小企業庁は2026年6月29日、広告業における取適法違反の集中調査の結果を公表し、広告業者に71件の指導を行いました。口頭発注で発注内容を明示しない、修正の条件を決めずに無償で何度も修正・校正させる、知的財産権を無償で譲渡させる、コンペの試作品を無償で作らせる、手形や振込手数料を負担させる、といった行為が指導の対象です。
代理店がクライアントのLPを制作会社に出す取引は、資本金か従業員数の基準に当てはまれば取適法の対象です。広告主が自社のLPを外注する場合は、自社で作る能力があるかどうかで扱いが分かれます。どちらの立場でも、発表は修正の条件を発注時に決めることと、予定にない変更で生じた費用を払うことを求めています。
LPの修正は、広告の運用を続けるかぎり発生します。修正の回数と費用の扱いを発注時に決め、小さな修正は社内で回せる体制にしておくと、制作会社との取引を健全に保ちながら、LPの改善の速さも落とさずに済みます。
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