損失回避バイアスとは|広告・LPの訴求の言い方と注意点

#ABテスト#LP改善
損失回避バイアスとは|広告・LPの訴求の言い方と注意点

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「今だけ」「見逃すと損」「このままだと〇円払い続けることに」。広告やLPでこうした言い方を見かけて、自社でも使うべきか、使ってよいのか迷ったことはないでしょうか。同じ内容でも、「得をする」と書くか「損をしない」と書くかで、受け止め方が変わることがあります。

その背景にあるのが、損失回避バイアス(損失回避、損失回避性とも呼ばれます)です。ただし、マーケティングの解説でよく見る「損は得の2倍に感じる」といった数字は、どの研究のどの実験の数値なのかが書かれていないことが少なくありません。

この記事では、損失回避バイアスを元の論文(原典)に書かれた実験の数値で説明したうえで、広告・LPで訴求の言い方を決めるときの考え方、「期間限定」の表示で景品表示法上注意すること、Squad beyondで言い方をABテストする手順をまとめます。

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1. 損失回避バイアスとは|失う痛みは、同じ額を得る喜びより大きい

1-1. プロスペクト理論の価値関数

損失回避は、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが1979年に経済学の学術誌Econometricaで発表した「プロスペクト理論」の中で示された性質です。

プロスペクト理論では、人は最終的な資産の額ではなく、利得と損失(増えたか減ったか)に対して価値を感じると考えます。その価値の感じ方を表す「価値関数」は、利得の側では通常は上に凸、損失の側では一般に下に凸で、損失の側の方が一般に傾きが急だとされています(出典:Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk|Econometrica(1979) p.263)。

論文は、福利の変化に対する態度の際立った特徴として「損失は利得より大きく感じられる」ことを挙げ、ある額のお金を失う苛立ちは、同じ額を得る喜びより大きいように見える、と書いています(出典:同 p.279)。価値関数は、参照点(増減を測る基準)からの変化で定義され、参照点のところで最も傾きが急なS字型です(出典:同 p.279)。

プロスペクト理論の価値関数の形。参照点を境に、利得の側は上に凸、損失の側は下に凸で傾きが急なS字になることを示した図(曲線は形を示す絵で数値ではない)

1-2. 半々の確率で得するか損するかの賭けは避けられる

同じ論文には、多くの人は「50%の確率で一定額を得て、50%の確率で同じ額を失う」という対称な賭けを、はっきり魅力がないと感じると書かれています。そして、この種の賭けを嫌う程度は、一般に賭ける金額が大きいほど強まります(出典:Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk|Econometrica(1979) p.279)。

1981年に同じ2人がScienceで発表した論文でも、損失への反応は利得への反応より極端で、ある額を失う不快は同じ額を勝ち取る喜びより一般に大きく、コイン投げの公正な賭けを人々が受けたがらないことに表れている、と説明されています(出典:The Framing of Decisions and the Psychology of Choice|Science(1981) p.454)。

1-3. 「損失回避」という呼び方と、倍率の数字の扱い

1992年の2人の論文(累積プロスペクト理論)の要旨では、価値関数の特徴的な曲がり方を説明する2つの原理の1つとして「損失回避(loss aversion)」が挙げられています(出典:Advances in Prospect Theory: Cumulative Representation of Uncertainty|Journal of Risk and Uncertainty(1992))。日本語では「損失回避」「損失回避性」「損失回避バイアス」と呼ばれます。

なお、この記事で本文を確認した1979年と1981年の論文には、損失が利得の何倍に感じられるかという倍率は書かれていません。社内資料や広告の企画書で倍率を引用する場合は、どの論文のどの実験の数値かを原文で確かめてから使うのが安全です。

2. 得か損かは「基準(参照点)」で決まる

広告・LPの訴求で特に大事なのは、「何を基準にした得か、損か」で選択が変わる点です。

2-1. 先に1,000もらった人と、2,000もらった人で選択が逆になった

1979年の論文では、2つのグループに次の問題を出しています(金額はイスラエルの通貨。回答者は学生と大学教員で、仮想の選択に答えています)(出典:Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk|Econometrica(1979) p.264・p.273)。

問題前提選択肢選んだ割合
問題11(70人)持っているものに加えて1,000もらったA:50%の確率でさらに1,000もらう16%
B:確実にさらに500もらう84%
問題12(68人)持っているものに加えて2,000もらったC:50%の確率で1,000失う69%
D:確実に500失う31%

最終的に手元に残る額で見ると、AとC、BとDは同じです。それでも、「もらう」と書いた問題11では確実な方が、「失う」と書いた問題12では賭けの方が多く選ばれました。論文は、参加者が先にもらった額を選択肢と合わせて考えず、価値を感じる対象は最終的な資産ではなく資産の変化だ、と結論づけています(出典:同 p.273)。

2-2. 「200人が助かる」と「400人が死亡する」で、選ばれる案が変わった

1981年の論文では、600人の死亡が見込まれる病気への2つの対策を、言い方だけ変えて別々のグループに選ばせています。回答者はスタンフォード大学とブリティッシュコロンビア大学の学生です(出典:The Framing of Decisions and the Psychology of Choice|Science(1981) p.453)。

  • 「助かる」の言い方(152人):「Aなら200人が助かる」を72%、「Bなら1/3の確率で600人が助かり、2/3の確率で誰も助からない」を28%が選んだ
  • 「死亡する」の言い方(155人):「Cなら400人が死亡する」を22%、「Dなら1/3の確率で誰も死亡せず、2/3の確率で600人が死亡する」を78%が選んだ

AとC、BとDは同じ内容です。論文は、利得を含む選択はリスクを避ける方向に、損失を含む選択はリスクを取る方向になりやすいという共通のパターンを示すものだとしています(出典:同 p.453)。

言い方と基準で選択が変わった原典の実験。1981年の病気の問題では「助かる」の言い方で確実な案が72%、「死亡する」の言い方で賭けの案が78%。1979年の問題では確実に500もらうが84%、50%で1,000失うが69%

2-3. 「現金割引」と「カードの追加料金」

同じ1981年の論文は、価格の言い方に関わる例も紹介しています。価値関数は損失の方が傾きが急なので、選択肢の差は、一方の「利点」として示すより、もう一方の「不利な点」として示した方が大きく感じられます。その例として、クレジットカード払いと現金払いの価格差について、カード業界の代表が「カードの追加料金」ではなく「現金割引」と呼ぶよう求めた、というセイラー(Thaler)の指摘を挙げています。損失は利得より大きく感じられるので、消費者は割引をあきらめるより、追加料金を受け入れる方を嫌う、という説明です(出典:The Framing of Decisions and the Psychology of Choice|Science(1981) p.456)。

同じ価格差でも、どちらの価格を「普通」として見せるかで、ユーザーにとって得になるか損になるかが変わる、ということです。

3. 広告・LPの訴求で使うときの考え方

3-1. 同じ事実を「得る」と「失う」の2通りで書ける

損失回避バイアスを訴求に使うといっても、新しい事実を作るわけではありません。同じ事実を、得る側と失う側のどちらから書くかを選ぶことです。次の表は説明用の文例で、〇の部分には自社の事実を入れます。

事実得る側の言い方失う側の言い方
年払いは月払いより安い年払いにすると年間〇円安くなります月払いのままだと年間〇円多く払うことになります
申込期限がある特典〇月〇日までの申込で特典がつきます〇月〇日を過ぎると特典はつきません
作業時間を減らせるツール毎月〇時間の作業を減らせます毎月〇時間を手作業に使い続けることになります

どちらの言い方にしても、〇に入る数字や期限が事実であることが前提です。期限や価格を「失う」側から書く場合の注意点は4章で説明します。

3-2. 何を基準にした「損」かを、広告とLPでそろえる

2章の実験が示すように、得か損かは基準(参照点)の置き方で変わります。広告で「月払いのままだと損」と書いたなら、ユーザーはいまの支払いを基準にLPを見ます。LPのファーストビューが別の基準(たとえば他社との比較)で始まると、広告で示した基準とつながらなくなります。

広告の訴求の切り口ごとに何を基準にしているかを整理しておくと、LPの書き出しを決めやすくなります。訴求の切り口の整理は「訴求軸とは?|広告で使える7軸の例とABテストの進め方」で解説しています。

3-3. どちらの言い方が効くかは、テストで確かめる

原典の実験は、言い方で人の選択が変わることを示していますが、学生などに仮想の問題を答えてもらったもので、広告やLPのCVを測ったものではありません。得る側と失う側のどちらの言い方がCVにつながるかは、商材、価格帯、ユーザーの検討の段階で変わりうるため、自社のLPで比べて決めます。

ボタンの文言そのものの作り方は「成果が出るCTAの文言の作り方|事例、5つのコツと改善方法を紹介」を、CVRを上げる取り組みの全体像は「CVR改善の基本:心理・導線・検証を一つずつ整える」を参考にしてください。

4. 「期間限定」「今だけ」の表示で注意すること

「期間を過ぎると失う」という言い方は、損失回避の考え方と結びつきやすい表現です。ただし、期限や価格が実態と違えば、景品表示法の問題になります。

4-1. 有利誤認表示は「誤って」表示しても対象になる

景品表示法第5条第2号は、商品やサービスの価格その他の取引条件について、実際のものや競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示で、不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものを禁止しています(出典:不当景品類及び不当表示防止法|e-Gov法令検索)。

消費者庁は、故意だけでなく誤って表示した場合も、有利誤認表示に該当すれば規制されると説明しています。具体例として、基本価格を書かずに「今なら半額!」と表示したが、実際には50%割引とは認められない料金で請け負っていた、という例が載っています(出典:有利誤認とは|消費者庁)。

4-2. 期間限定キャンペーンの「比べる価格」に根拠が要る

消費者庁が公表しているガイドラインの1つ「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」は、インターネット接続サービスの表示について、期間限定キャンペーン中の価格と比べる価格(比較対照価格)は、過去の販売価格なら直近の一定期間に実際に適用されていた価格、将来の販売価格ならキャンペーン終了後に実際に適用する予定であるなど、十分な根拠のある価格である必要があるとしています(出典:消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項|消費者庁 第3)。

4-3. 「〇日以降は〇円」と書くなら、その価格で販売する予定が必要

価格表示ガイドラインは、セール期間が終わったあとも販売価格を引き上げる予定がないのに、又は終わったあとごく短期間しかその価格で販売しないのに、セール期間後の将来の販売価格を比較対照価格に使うことを、不当表示に該当するおそれがあるものとして挙げています(出典:不当な価格表示についての景品表示法上の考え方|消費者庁 第4の2(1)イ)。将来の販売価格を比べる表示については、消費者庁が別に執行方針も公表しています(出典:将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針|消費者庁)。

「失う」側の言い方は、期限が本当にあり、期限後の条件が本当に変わる場合にだけ使えます。比べる価格の期間の基準などの詳細は、上の消費者庁の原文で確認してください。

5. 損失回避バイアスを使うときのよくある失敗例

5-1. 失敗例1:期限後も同じ価格で売り続けると、「今だけ」の表示が実態と違う表示になる

症状:LPに「〇月〇日までの限定価格。以降は〇円になります」と書き、期限を過ぎても値上げせずに同じ価格で販売を続けると、期限と将来の価格の表示が実態と違う表示になり、景品表示法上の問題になるおそれがある。

原因:「失う」側の言い方を先に決め、期限後の価格を実際にどうするかを決めていない。価格表示ガイドラインは、セール期間後に販売価格を引き上げる予定がないのに将来の販売価格を比較対照価格に使うことを、不当表示に該当するおそれがあるものとして挙げています(出典:不当な価格表示についての景品表示法上の考え方 第4の2(1)イ)。

対策:期限後の価格と、その価格での販売の予定を先に決め、決められないなら将来の価格を書きません。期限を過ぎたら、LPと広告から期限の表示を外します。

回避策:キャンペーンの開始前に、終了日、終了後の価格、LPと広告の表示を切り替える日をまとめて決め、担当を決めておきます。LPの切り替えを日付で予約できる環境なら、終了日に合わせて設定しておきます(6-4)。

5-2. 失敗例2:広告とLPで「得・損」の基準がずれると、広告で期待した内容とLPがつながらなくなる

症状:広告で「月払いのままだと年間〇円の損」といまの支払いを基準に訴求し、LPのファーストビューを「他社より〇円お得」と他社を基準に書くと、ユーザーは広告で受け取った基準とLPの基準が違うため、広告で期待した内容とLPがつながらないと感じやすくなる。

原因:得か損かは基準の置き方で変わります。1979年の論文の問題11と12では、最終的な結果が同じでも、先にもらった額という基準の違いで選択が逆になりました(出典:Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk|Econometrica(1979) p.273)。広告とLPを別の担当が別々に書くと、この基準がずれやすくなります。

対策:広告の訴求ごとに「何を基準にした得・損か」を1行で書き出し、LPのファーストビューの書き出しをその基準に合わせます。

回避策:訴求の基準ごとにLPの版を分けておき、広告に合わせて着地する版を変えます。新しい広告を作るときは、基準の一覧に追加してからLPを決める手順にします。

5-3. 失敗例3:言い方と一緒に価格や特典も変えると、何が効いたか分からなくなる

症状:「得る」側と「失う」側の言い方を比べるテストで、失う側の版だけ特典を増やしたり価格を変えたりすると、CVが変わっても、言い方が効いたのか、特典や価格が効いたのかを判断できなくなる。

原因:損失回避の効果を確かめたいのに、テストの設計で比べる要素を1つに絞っていない。原典の実験でも、比べた2つの問題は最終的な結果が同じで、言い方だけが違うように作られています(出典:The Framing of Decisions and the Psychology of Choice|Science(1981) p.453)。

対策:1回のテストで変えるのは言い方だけにし、価格、特典、画像、ボタンの位置は同じにします。特典の違いを比べたいときは、別のテストとして行います。

回避策:テストを始める前に「変える箇所」と「変えない箇所」を書き出し、2つの版を並べて確認してから配信します。テストの記録に、変えた箇所、期間、PV、CVを残します。

6. Squad beyondで訴求の言い方をABテストする

得る側と失う側のどちらの言い方が自社のユーザーに合うかは、比べてみるまで分かりません。Squad beyondでは、次の流れで言い方を比べ、期限のある訴求を管理できます。

Squad beyondで訴求の言い方をABテストする流れ。Versionを複製して言い方だけを変え、配信割合を決めてCTVRで比べ、広告に合わせてパラメータで出し分け、期限のある訴求は日付別に切り替える

6-1. Versionを複製して、言い方だけを変える

Squad beyondでは、LP(Version)を複製して、ファーストビューやCTAボタンを変えたABテストを行えます(出典:Versionを複製する|Squad beyond FAQ)。元の版を残したまま、見出しやCTAの周りの文言だけを「得る」側から「失う」側に書き換えた版を作ります。

6-2. 同じ配信URLで配信割合を決め、CTVRで比べる

ABテストは、配信タイプ「同一URL配信」のbeyondページに複数のVersionを作り、配信するVersionの配信割合を1以上にして行います。FAQには、設定した配信割合と実際の配信結果には差が出ることがあり、その差は100PVで10%、10,000PVで1.0%になる例が書かれています(出典:ABテストを実施する|Squad beyond FAQ)。アクセスが少ないうちに結論を出さないようにします。

比べる指標は、Versionを閲覧したユーザーがCVする確率のCTVR(CV数÷VersionPV)や、クリックしたユーザーがCVする確率のCVR(CV数÷Versionクリック)です(出典:レポートの指標①(CTR・CVR・CTVR)|Squad beyond FAQ)。LPの指標の見方は「LP分析で押さえておくべき5つの指標|陥りがちな失敗や具体的な分析方法も解説」で、テストの進め方の例は「ABテストの成功事例6選|検証スピードを高める進め方・注意点も解説」で紹介しています。

6-3. 広告の言い方に合わせて、着地するVersionを出し分ける

広告で使った基準とLPの基準をそろえるには、広告ごとに着地する版を分けるのが確実です。Squad beyondでは、URLに特定のパラメータが付いている場合だけ、指定したVersionを表示できます。指定したパラメータを含まないURLからアクセスし、配信割合が1以上のVersionが無い場合は404エラーになるため、配信前にパラメータを付けたURLで確認するよう書かれています(出典:パラメータごとにVersionを出し分けする|Squad beyond FAQ)。

6-4. キャンペーンの期間に合わせて、表示を切り替える

期限のある訴求は、期限が来たら表示を終わらせる必要があります(4章)。Squad beyondでは、有料の機能で、指定した日程に合わせてVersionを出し分けられます(出典:2024/08_リリース情報|Squad beyond FAQ)。設定はVersion編集画面の[Versionオプション設定]→[日付別]から行い、1つのVersionも配信されない期間がある場合は設定が適用されないとされています(出典:日付別にVersionを出し分けする|Squad beyond FAQ)。キャンペーンの版を期間中だけ、通常の版をそれ以外の期間に配信するよう設定しておけば、期限後に表示が残ることを防げます。

また、有料のポップアップ機能には、LPから離脱しようとするユーザーに「期間限定キャンペーン」などを訴求する離脱防止ポップアップがあり、ポップアップも配信割合を決めてABテストできます(出典:ポップアップ機能(有料)について|Squad beyond FAQ、ABテストを実施する|Squad beyond FAQ)。使うのは、期間限定が事実である場合に限ります。

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7. 損失回避バイアスについてよくある質問

Q. 損失回避バイアスとは、簡単に言うと何ですか?

同じ額でも、失うことの痛みの方が、得ることの喜びより大きく感じられる傾向です。1979年のカーネマンとトベルスキーのプロスペクト理論の論文は、「損失は利得より大きく感じられる」ことを、利得と損失に対する態度の際立った特徴として挙げ、多くの人が半々の確率で同じ額を得るか失う賭けを魅力がないと感じることを示しています。日本語では損失回避、損失回避性とも呼ばれます。

Q. 「損は得の2倍に感じる」というのは本当ですか?

この記事で本文を確認した1979年と1981年の論文には、損失が利得の何倍に感じられるかという倍率は書かれていません。1992年の論文の要旨は、損失回避を価値関数の形を説明する原理として挙げていますが、倍率は要旨には書かれていません。倍率は研究や実験の条件によって違う可能性があるため、資料や広告で数字を使う場合は、どの論文のどの実験の数値かを原文で確かめてから使ってください。

Q. プロスペクト理論と損失回避バイアスはどう違いますか?

プロスペクト理論は、人がリスクのある選択をどう行うかを説明する理論で、損失回避はその中の性質の1つです。理論では、人は最終的な資産ではなく利得と損失に価値を感じ、その価値関数は参照点からの変化で定義され、利得では上に凸、損失では下に凸で、損失の方が傾きが急だとされています。この「損失の方が急」という部分が、損失回避にあたります。

Q. 広告で「損しますよ」と書くと、効果は上がりますか?

上がるとは限りません。原典の実験は、同じ内容でも言い方で選択が変わることを示していますが、学生などに仮想の問題を答えてもらったもので、広告やLPのCVを測ったものではありません。どちらの言い方がCVにつながるかは商材やユーザーで変わりうるため、得る側と失う側の言い方を比べて確かめるのが確実です。Squad beyondでは、Versionを複製して言い方だけを変えた版を作り、同じ配信URLで配信割合を決めて比べられます。

Q. 「期間限定」と書くときに気をつけることは何ですか?

期限と、期限後の条件が事実であることです。消費者庁の価格表示ガイドラインは、セール期間後に販売価格を引き上げる予定がないのに、セール期間後の将来の価格を比べる価格として使うことを、不当表示に該当するおそれがあるものとして挙げています。期限が来たら、LPと広告から期限の表示を外すことも必要です。Squad beyondでは日付別にVersionを出し分けられるので、キャンペーンの版を期間中だけ配信し、終了と同時に通常の版に切り替える運用にできます。

Q. 損失回避の言い方は、LPのどこで使えばいいですか?

候補になるのは、ファーストビューの見出し、料金や特典の説明、CTAボタンの周りなど、ユーザーが選択を決める場所です。ただし、どこに置くとCVにつながるかを示した原典はないため、置く場所も比べて決めます。同じ事実を得る側と失う側のどちらから書くかを決め、広告で示した基準とLPの基準をそろえるのが前提です。Squad beyondでは、VersionごとのCTVRを比べられるので、見出しだけ、CTAの周りだけ、と1か所ずつ変えた版を順に試せます。

8. まとめ

  • 損失回避バイアスは、同じ額でも失う痛みの方が得る喜びより大きく感じられる傾向。プロスペクト理論(Econometrica 1979)で、価値関数は損失の方が傾きが急とされた
  • 得か損かは基準(参照点)で決まる。1979年の論文では、先にもらった額が違うだけで、同じ結果の選択が逆になった(84%が確実な方/69%が賭けの方)
  • 言い方だけでも選択は変わる。1981年の論文では「200人が助かる」を72%が選び、同じ内容の「400人が死亡する」は22%だった
  • 広告とLPで「何を基準にした得・損か」をそろえる。「2倍」などの倍率は出典を確かめずに使わない
  • 「期間限定」「〇日以降は〇円」は、期限と期限後の価格が事実の場合だけ書く。景品表示法の有利誤認に注意する

損失回避バイアスは、事実を「失う」側から伝える選択肢があることを教えてくれますが、どちらの言い方が自社のユーザーに合うかは原典からは分かりません。Squad beyondのVersionの複製と配信割合で言い方を比べ、期限のある訴求は日付別の出し分けで期間どおりに終わらせる運用にしていきましょう。

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